【3】「きもの のはなし」

< 第32回 「十日町と塩沢」産地研修記 >

越後(新潟県)は京都とならんで数多くの着物を生産する 地方です!一般の人にはメジャーでないかも知れませんね。 やはり京都友禅、大島紬などと比較してしまうと ブランドイメージは決して高くありません。 さらに言えば、業界内の評価もイマイチでした「なんだ、十日市モノか。」と話している 姿を見たこともあります(苦笑)。どうやら、戦後に多角化した和服生産を 指して、物マネ・安物のイメージをもつ世代もあるようです。 こんな話があるからこそ、本来の素晴らしい生産品はもっと評価されてほしいと思います。

2001年、私はこの地方に二泊三日の日程で10軒のメーカーさんを訪ねる機会がありました。 まだ、知識の乏しかった私は先入観もなく、素直に勉強することができました。十日町は… まず、非常に名古屋から遠かった!(笑)。度々行ける場所ではないです。 そして一大産地というだけあって時間的にまったく足りなかった! (1件に半日ほしい。) …とにかく目一杯の多くの着物にふれて、物作り、取り組みを見て回りました。 以下、基礎知識を紹介しましょう。

  
1 この地方の歴史は古く、飛鳥天平の時代

←右「本塩沢」…さらりとした独特の風合い。
←左「明石縮」…十日町で織られる盛夏の織物。
絹織物…小千谷紬・塩沢紬・十日町紬 ・五泉織物
麻織物…越後上布・小千谷縮/綿織物…片貝木綿
平成21年 「小千谷縮・越後上布」がユネスコ無形文化遺産
代表リストに登録されました

おもな地域
南魚沼市(塩沢町含む)・小千谷市・十日町市・五泉市

2 歴史的背景

 物づくりの流れは、越後上布−越後縮−絹縮−明石縮と、 時代とともに重層的に発展してきました。 江戸時代、他の雪国が麻を織り継ぐなか、絹織物の生産を始めたことは象徴的です。

そして近年になると(京都の分業に対して) この地方の一貫生産の利点を活用して、 友禅染をはじめ、あらゆる物作りへ自然に発展をとげたのです。

3「創造性」も伝統

 十日町の持つ活力は、そのまま、多種多様な生産物に見ることが出来ます。 十日町といえば「つむぎ」ですが、フォーマルきものも沢山作っていて・・・ 「物マネ」と言われることもありますが、歴史的に振り返れば、創造性を表す一側面 だと私は感じました。

十日町年間生産量 2000年度
振袖・訪問着 各約3万点 / 留袖・付下 約2万点
その他 約9000点 / 紬・絣 4万点

※おしゃれ着から振袖、訪問着、付下げなど…
今では、紬・絣の倍の数量に伸びています。

 
4 きもの文化の見学・体験

 雪まつりで有名な十日町。道の駅「クロス10」など、 きもの文化を見学・体験できる施設が5〜6カ所あります。

ものづくり…ぼかし染めの見学では、職人の感覚であわせ てゆくので、一枚のきものは当然ひとりで仕上げないと、微妙にくるってしまうそうです。

 思い出…高度経済成長のころは、倉庫が「黒の絵羽織」で 天井まで満タンになってしまったとか。 それでも数日で無くなる…今はガラガラの倉庫を案内されて説明を聞きました。。

 
5 まだある! 注目の着物

 おぼろ染の振袖… 十日町が元祖です。
 吉澤織物 与市の着物… 紬に染め、絞りなど加工
 やまだ織 本塩沢… 現在的なデザインもあります
 サマーウール、お召し… まだ生産しています。
 袋帯… コーディネート用に作り始めています。

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