【3】きものの話

<<第22回 花車と吉祥文様 >>

日本的なデザインは数々ありますが、今では見かけない・使わない図案も多数あります。 今回は「いとみや」的に伝統的な図案を説明してみます。

【例 古典文様の「車」】きものデザインに使われる車は、現在の自動車とはまったく異なる 意味合いを持ちます。庶民にとって車がまったく縁のない時代では「高貴な象徴」。 玉の輿の・・・輿に近いもの。例えば「花車」はイメージ的に「宝船」に近いものだと感じます。 つまり夢や幸福を積んだ車が「自分のところへやってくる」イメージ。 宝船に比べて、四季を彩る花々がより華やかさを持った図案と言えるでしょう。 御所車(源氏車ともよばれます)も同様に身分の高い社会を連想できます。 生活の向上・幸福を象徴するデザイン(吉祥柄)です。
吉祥柄:きっしょうがら、とは縁起の良い、おめでたいデザインを指します。 天や地から授けられる幸運や力を吉祥といい、それをキモノを着ることでいただく。 そのことの有り難さやめでたさ。キモノを着る価値のひとつでしょう。 御所解文様(公家生活の周辺にある物が題材)、 熨斗文様(祝い事の進物に添える)、鳳凰紋(瑞祥の鳥)なども、同様の吉祥紋です。

文化とは、意味を持たせること。自然から学ぶこと。吉祥柄は、鶴亀・松竹をはじめ、 無数に存在します。広い空想力、無限の創造力の表れです。 そして、その意味を知ると、 変わらない価値観に共感します。デザインが過去と現在をつないでいるのですね。

きものによく使われる「デザイン」
◆「茶屋辻」 街道沿いにあるお茶処。 ただの喫茶店柄!と言えば、つまらなくなりますが、 旅と出逢いの交差する場所。素朴な自然を背景にしたものが多く、 落ち着きの中にロマンがあります。訪問着、付下げなどに描かれます。
◆「扇面」 うちわ、としての機能ではなく、 広げたときに末広がりになることから、縁起がよいと考えられているデザインです。 高貴なアクセサリで、女性らしさも人気のあるデザイン。 振袖・留袖・訪問着・帯など、晴れ着に用いられる古典文様です。   
◆「薬玉」
くすだま
5月5日の節句に用いた飾り物を文様化。女児の祝い、振袖に。
◆「橘」
たちばな
花のデザインは多くありますが、 吉祥文様として伝統的に使われる例として、この花を挙げておきます。 今ではあまり身近に感じませんが、柑橘類の「柑」ミカン類と並べると分かりやすいかも。 実際は花ではなく実で、ミカンより小さめです。このデザインは古い中国の伝説から、「不老不死」を あらわします。古典的な晴れ着、振袖などに描かれます。   
◆南天 ナンテンは、「難転」難を転ずると 言い換えられることから、縁起の良い柄として描かれます。
◆有職文様
ゆうそくもんよう
平安時代から近世まで、公家の装束や 調度に用いられた文様を総称した呼び名。奈良時代に中国から伝来、以後和洋化した物です。 文様には菱紋、亀甲紋、立涌紋、七宝紋、唐草紋、雲鶴紋などがあり今日の文様の基礎に なっています。

糸美屋TOPへ

コラムTOPに