【3】「きもの のはなし」

<<第25回 かまわぬ >>

「春夏冬中」たまに、このように書かれた看板があります。なんと読むのでしょうか? これは、(四季のなかに)秋がないことから、「あきない、ちゅう」→「商い中」と読みます。 漢字そのものの読み方ではなく、一種の謎解き、「目で見るなぞなぞ」です。 江戸時代、<判じ物>といわれる文化が隆盛を極めました。 文字や絵も使って意味を表す遊び、判じ物についてご紹介しましょう。

判じ物を着物や手拭いのデザインにしたものを「謎染め」といいます。 現在、最もよく知られているのは「かまわぬ」でしょうか。手拭いのデザインとして販売されています。 「かまわぬ」とは、「オレは構わない。」小さな事に執着しない江戸っ子の気質、ポリシーを 表現するデザインです。江戸の町人が好んで身につけたと言われています。 ただ、時には(博打も女遊びも)放っておいてくれ、という意味もあったとか。。 当然、これに対して妻達は反発しますので、同じように判じ物をつかって咎(とが)めたそうです。 つまり、「(いいえ)構います!」…鎌の絵と井の文字、升の絵をならべたデザイン【かまいます】があった。(笑) 縁起の良い判じ絵で有名なのは「よきこときく」です。 斧、琴(または琴柱の絵)、菊の絵をタテに並べた模様。小さな斧を上方では「よき」と読んでいました。 三代目尾上菊五郎が自らのアイディアを加えたものだといわれています。 ほかに「菊五郎格子」「市村格子」:着物デザインとして知られている判じ絵があります。

また、判じ絵は、着物や看板以外にも団扇のデザインをはじめ、戯曲の題名まで広く使われました。 例えば、人形浄瑠璃「仮名手本忠臣蔵」・・・これも赤穂浪士討ち入りを連想させるために考えられた、判じものです。 当時、幕府にとって罪人の大石蔵之助を実名で上演することは出来ませんでした。そこで主人公を「大石由良之助」として、 題名の蔵の字と併せて表現したわけです。また、かな文字は47であり、討ち入り浪士の数を連想させました。 さらに、仮名文字を7文字ずつ区切って最後の文字をつづけて読むと「とかなくてし」→「咎無くて死」という メッセージがある、という説もあります。時に暗喩、暗号としての使われ方もしたようです。 判じ物は、ダジャレであったり、逆さまに読むモノだったり、パターンは多彩です。 擬人化もあります。ガマガエルがお茶をたてている様子から、「茶釜(チャガマ)」をあらわす、とか。 浮世絵では、よく絵を見ると遊女の名前をどこかに隠している?こともあったそうです。

判じ物の起源は、平安時代の「掛詞」で現代のユーモアの原点といわれています。 江戸時代には狂歌、連歌といったコトバ遊びも流行しました。 今でも、女子高生の間でこの遊び心が見られますね。 メールの独特の表現や隠語は、ナカナカ楽しい。「与謝野ってるよ〜!」は、寝ぐせを指摘するときに使うコトバ。 「みだれ髪」から連想するみたい! 判じ物は、しゃれと粋を表現する庶民のユーモア。 伝統的なデザインも、身近に感じられますね! 私が好きになった判じ物は「春夏冬二升五合」これは、商い益々繁盛と読みます。

糸美屋TOPへ

コラムTOPに