【2】世間はきものを待っている

<第24回 和裁の熱い戦い>

昨年は和食、今年は和紙がユネスコの無形文化遺産になりました。 着物にも、結城つむぎや小千谷縮、越後上布がすでに登録されています。 こういった高い技術が認められることは良いことなのですが、手放しで喜べない現実があることが気がかりです。 文化の伝承には、ある程度の需要が伴わないと消えてしまうからです。
先日、「10年後になくなることが危惧されている職業」に和裁が入っていました。 ユネスコの選考基準のひとつは「消滅の可能性」。未来にのこるか、瀬戸際かも知れません。

偶然にも、地元で「技能五輪全国大会」和裁部門がおこなわれたので、出掛けてきました。
この大会は若い世代への技術継承が目的です。和裁は付下げの袷を仕立てるのが課題で、9時間でどれだけ美しく仕上げるか。 全国から23歳以下の代表30名が競います。 派手さは微塵もありません。真摯に布と向き合い、指の感覚だけを頼りに衣に変貌させていきます。 未来をになう若手の仕事姿はとても美しいですね。真剣勝負を見ていて、これからもお世話になります! という前向きな気持ちになりました。

僕は、仕事柄、着物を解くことは(稀に)やります。 パーツごとに解体していると、どれだけの技術で作られているか、少しわかります。 手間暇をおしまない手作業が、永い寿命の衣服を支えるのでしょう。 世代をこえる耐久性、仕立て直しができるのも、手作業のワザがあるから。 運針やコテの使い方、くけなど、個々の技術は僕にはわかりませんが、直線裁ち、内揚げ、掛け衿、数々の工夫や知恵があります。 説明が長くなりましたが、ほんの5分見るだけではもったいない。
解説がないと魅力が伝わらないものですが。伊藤市長も、もう少し観戦してほしかったです。

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