【2】世間はきものを待っている!

<第30回 ネットで手に入らない着物 >

いまは物流も情報も早いので、着物屋もわざわざ京都へ行かなくて済みますが、特殊なモノは別。 逆に入手困難な時代になりそうです。ネットでも買えない着物は確かにあるんですよ。

小売店は問屋からの買い付けが基本的な秩序ですが、例外的に直接、作家さんと連絡をとる場合もあります。 今月も稀なケースで、人間国宝といわれるかたの工房にでかけました。とても勉強になりましたが、具体的な話は書けないのが残念です。 どんな商売でもそうですが、まず馴染みの取引先を大切にしなければなりません。 (その上で他のところも検討していく努力も必要です。) 売買の自由があるいっぽうで、ウチの業界も流通のモラルが残っています。今回の取引先が 話をふせてほしいと言った理由もよく理解できます。 「尾ひれのついたウワサ話が広がるかも」と危惧されていました。 狭い業界なのです・・・。

こう書くと、保守的だとか、排他的という感想をもたれるかも知れませんね。(実際そうかも知れません。) 個人的な意見ですが、着物産業は伝統が大切なので、保守的・排他的な壁があっても結構!なんです。 秩序立った重層的な産業構造が守られていくのが本来の姿だと思います。
問題は、市場が縮小していくなかで、メーカーも問屋も小売店も力がなくなってきたことです。 作品が簡単に手に入らない、集められない、見ることも叶わない。負の連鎖。

現実は、良くも悪くもハードルが下がっています。 前向きに考えれば、熱意さえあれば、零細店でも直接、作家さんや着物工房にアクセスできる時代。 背景は手放しで喜べませんが、零細店は流通の隙間を埋める役割ができるのです。 そして、ネットというインフラがあっても、負の連鎖のなかで、特別なきもの、特殊なきものを探すには不十分。 人と人、着物を結ぶときには実際に出会うこと。パイプ役として小売店を利用してもらいたいと感じます。

これまでも、直接、作家さんと関わったことがあります。(オーダーメイドで描いてもらいました。) 着物産業というより着物文化にふれるような仕事は貴重で楽しいです。 いつでもお客様のご要望にこたえることに変わりはありません。またの機会があればチャレンジしたいです。
ちなみに、いままで会った作家先生は多くはありませんが、どのかたも気さくで、親切で、 職人でありながら丁寧な対応をしてくださいます。本当に有り難く、皆さまにご紹介したいかたばかりです。

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