【2】世間はきものを待っている!

<第31回 繕い裁つ人>

「繕い裁つ人」は昨年(2015年)の映画です。 ストーリー…祖母が始めた小さな洋裁店を継いだ2代目の店主・市江を主人公に、 洋裁を通してとりまく人々との交流を描いた物語。 時代が移りゆく中で祖母の意思を受け継ぎ『一生添い遂げられる服』にこだわって、 その人だけの服を作り続けていく。(ウィキペディアより)

この映画には着物と共通のテーマが感じられます。ご存じないかたもいると思いますので、 少し解説しながら書きますが、衣服に宿る想いを発見、または再確認できる作品です。  いまは、大量生産と大量消費で経済をまわす時代。 昨今のファストファッションに逆行した話は不自然でしょうか? ハッキリいえば、この話全体に現実離れした空気を感じるのは否めません。 流行に左右されない衣服、愛着をもって永く所有する衣服。 古き良き時代回顧?なんですが、原点や基本でもあります。 今の日常にはそぐわないですが、非日常にフォーカスしているので共感できます。 「衣服がどれだけ特別な存在になり得るか。」 見つめ直してみること。この「繕い裁つ人」は映像から心地よく伝わってきます。 いまの時代に忘れられそうなことです。

そして、着物屋の目で鑑賞すると自然と洋服を着物とおきかえてしまいますw 着物では、こうした愛着や職人魂、晴れ着の価値観が生き残っているので。 着物を所有する意味もハッキリ見えます。

主人公と店の雰囲気は落ち着いていて、日常は淡々としています。 モノ作りの空間は独特で、腰をすえた商売に憧れます。バーゲンやイベントとは無縁。刺激がたりない? 主人公は「自分の美しさを自覚している人に私の服は必要ないわ」「着る人の顔が見えない服は作れないわ」 相当がんこな職人です。 衣服はモデルのためじゃなく、私たち一人一人のためのリアルクローズであるべき、という考えでしょうね。 現実では、決して簡単なことではありませんが、目指していく姿だと思います。 また、後半に夜会の美しさに感嘆する場面があります。主人公が満足げに人々を見つめる姿はうらやましい。 自店の存在がこうした満足を提供できているか、ふと考えてしまいました。 女子高生が欲しても、手の届かない大人の衣服、高尚な衣服文化を感じられたのも嬉しくなります。 生活感と無縁の、特別な服。着る人を幸せにする服。一生モノの服。 着物こそ、そんな衣装になります。こうした衣服は変わらず求められていると思います。
「世代をこえて伝えていきたいこと」 最後に主人公がどう感じたのか。ぜひ見てください。私も伝統にあぐらをかいてはいられません。 この映像作品のような伝える力、を身につけたいものですw

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