時は五大将軍綱吉の頃です。バブル商人の夫人たちの間では「伊達くらべ」と呼ばれる
ファッション対決が流行しました。そのなかでも「石川六兵衛」の妻は、たいへんにお洒落に
こだわった人でした。そして、「何処そこにお洒落な女性がいる」という話を聞けば、
ファッション対決を繰り返していました!
今でいう、イメルダ夫人? 叶姉妹? その熱意はわざわざ京都まで行くほどだったのです。
京都での、対決相手は、京の名勝地を着物にデザインした姿で登場。
きもの全体に金襴豪華に刺繍を施した、とにかく目立つ衣装。。それに対し、石川の夫人は、
ただの黒地の着物でやって参りました。もちろん、誰もが「なんだ、こんなのでは勝てない」と
言い合っておりました。ところが、近くに寄ってみてビックリ。
なんと黒地にまったく同じ黒色の糸で、刺繍をしている着物だったのです。
着物全体に、細かく、総柄刺繍で「南天」を施した、この贅沢さ。
さらに、南天の実だけは、刺繍ではなく、本物の「黒珊瑚」を惜しげもなく無数に縫い付けている
ではありませんか!!
夫人のファッション対決はどんどんエスカレートし、最後は、
将軍まで相手にしてしまいます。御一行が通る道のわきに金襴屏風をたてて、高価なお香を焚きしめて
、自分に気がつくように準備しました。
ところが、丁度、幕府の財政が悪化し、倹約をしようという
時期だったのです。怒りを買ってしまった石川家は財産没収となって江戸から追放されて
しまいましたとさ。
この話には後日談があります。(こちらのほうが有名ですね。) 石川六兵衛の屋敷を取り壊していた職人がびっくりするのです。 なんと、寝室の天井をガラス張りにして、高価な金魚を泳がせる・・・ 寝ながらにして観賞していたことが、世間に知られることとなったのです。