【3】「きもの のはなし」

<<第29回 色と文化 >>

突然ですが、七夕の歌詞を思い出してください。
「五色の短冊〜♪」という部分があります。5色とは何色のことでしょうか?  本来は、黒白赤黄青を意味するそうです。 黒色だけは、黒い短冊に墨で書いても分からないので、 紫色に変わりましたが、もとは中国の「五行」(ごぎょう)から来ているのが五色。 そして、五行とは、世の中は五つの物質から成り立っている思想です。 (日本には聖徳太子の頃、入ってきた思想。) ちなみに、七夕(しちせき)も中国の伝説&行事ですが、日本古来の行事、棚機(たなばた)と 一緒になったものだそうです。中国の天の川伝説は裁縫や習字が上達することを願う行事で、 日本の「たなばた」は織物を神に供える行事。もともとよく似ているそうです。 …着物屋としては、「織」姫というネーミングは好きですね! 「染」太郎となると、やっぱり年配者のイメージですがw。
話をもどして。色と思想は結びついていました。 それぞれの色の由来を知ると、文化がわかります。 今回は色の文化をご紹介します。

「命の象徴、赤。」… 吉祥、おめでたい意味があります。 古来、「いろ」は色彩と関係なく、女性のことでした。それが徐々に女性器、 血の色を意味するようになりました。 命を生む霊力を持つものが「いろ」だそうです。 色づく季節という表現の秋も、果実が実ること。色っぽいのは、女性。 幸いを願う祈りがこめられた色が赤色です。

「ほれ薬」… イモリの黒焼きが恋に効くという話を知っていますか? 思いを遂げたい相手にふりかけるか、酒に入れて飲ませると間違いない!と言われます。 背中が黒色、腹が赤色のイモリは、陰陽相対の関係で、互いに深く影響し、新たなものを生む目出度い色の取り合わせ です。お椀やお膳の外と内を、黒と赤に塗り分けたのも、その色の取り合わせで、めでたい事を祝うのです。

「旅立ちの色、白。」… 白装束。死に装束は本来「白」でした。 現在の黒色は、明治時代にイギリスの影響を受けたものです。 (悲しみを表すときは黒のリボンや腕章をつけなさい、という法律が出されたそうです。) 白装束は時代劇のなかで、仇討ちの服装や、切腹するときに見られますね。 ちなみに、お遍路さんの装束も行き倒れを覚悟した白色。遍路が持っている杖も、 出身地や名前を書いた卒塔婆が由来だそうです。白は骨の色が由来です。

「パワーの源、黒。」… 黒色は、古来の神さま「玄武」の色です。 もとは黒一色、デザインのない喪服のような装束が、結婚式の服装でもありました。 玄武は北の方角、丑の神ともいわれ、その力は絶大。ちなみに、「土用の丑」は 土用の「季節」と丑の「力」を意味します。

糸美屋TOPへ

コラムTOPに