【3】「きもの のはなし」

<<第39回 歌舞伎と着物のデザイン >>

春日井市では毎年、歌舞伎公演がおこなわれています。 今年は(主催の)市民文化財団さんと懇意になり、着物との関わりに注目してみました。 以下は、夏に浴衣セミナーをしたときの内容です。

歌舞伎は若い人には馴染みがない芸能だと思いますが、 ふだんの生活に広く影響しています。 歌舞伎というのは芸術であり、オペラのような劇ですが、単純に娯楽という面もあるからです。 今でいうと、テレビや映画、アイドルのライブのようなエンターテイメントでしょう。
例えば皆さんが食べる物にも、歌舞伎を感じることができます。 今では、幕の内弁当や助六というコトバは生活に溶け込んでいますが、 助六というのは、歌舞伎の演目のひとつです。揚巻という名前の美女が登場することから 、揚げずしと巻き寿司をあわせて助六と呼ぶようになったそうです。

歌舞伎の影響は、当然、ファッションにもありまして、 きものにも歌舞伎から生まれたデザインがたくさんあります。 人気役者の衣装は庶民にマネされました。娘さんが人気俳優を意識するのは今と全く変わらなかった ようです。実際の例を紹介しましょう。江戸時代の恋愛小説(春色梅ごよみ)のなかに 「ミマスにシカンの着物を着たむすめ」という記述があります。 これは現代でいうなら、スマップも好きだけど嵐にも注目してる、というと分かりやすいかも知れません。 やはり、15−6の娘が好むファッションとして書かれています。

四角を重ねたような図形、この三つ重ねた四角のことをミマス(三升)といって、歌舞伎役者、市川団十郎のシンボルです。 シカンというのは、中村歌右衛門が愛用したデザイン。(写真参照) 町娘がミマスにシカンの着物を着た、というのは団十郎と歌右衛門のファンだったということ。 お解り頂けたでしょうか。

また、粋で通好みなデザインもあります。 コラム「かまわぬ」に紹介しています。 歌舞伎は流行やファッションに結びついて、 カジュアルで遊び心のある着物、浴衣の定番になっているのです。」

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